杜の音だより

ギャラリー杜の音 コラム⑤

今回のタイトルは 「特定空家と独居の高齢者について」

( 過去のコラムはこちらから →     )

 

 令和4年3月16日23:34と23:36に最大震度6強の地震がありました。東日本大震災より11年が過ぎ地震慣れして震度3・4くらいでは「あ、揺れている・・・」程度の驚きと対応でしたが、今度は地鳴りと地表から突き上げる揺れに嫌な記憶が思い出されながら避難し、家族に声がけしていた自分がいました。

 幸い身内での被害はほぼ無かったのですが、数週間後に当社顧問の司法書士より宮城県南の柴田町の案件の依頼があり事例としてご紹介いたします。

【居住者】

 80代独居の男性。近隣の住民との交流はなし。介護認定も受けていなかった。民生委員及び行政の訪問を拒み続けてきた。(理由は不明)

 3月16日の10日前に自宅前の路上に倒れているのを隣地の住民に発見され救急搬送で仙台市内の病院に入院する。自宅への帰還が不可能と行政判断により、成年後見制度と「空家等対策特別措置法」に基づき、倒壊リスクの高い家屋の瓦撤去の緊急対応工事を依頼された。

 

【施工前】

 11年前の東日本大震災時の瓦の倒壊がそのままで屋根下地が現れて木材が腐っている。当然、室内は雨漏れ状態(実際は外と同じ状況)ではあったものの1階にて生活をしていた。

 ひな壇状の住宅地で、今回の地震で大量の瓦が近隣の住宅に飛散し被害を与えた。また庭木が茂り近隣への越境状況も著しかった。

 

3月31日撮影

 

【施工後】

 瓦を全て撤去し、防水シートとブルーシートにて屋根養生を実施した。

 

 2015年5月26日に施行された「空家等対策特別措置法」に基づき、「特定空家」に指定され行政指導を受け瓦の撤去作業となった。

『特定空家等』とは

そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。とされています。 

 

 

特定空家に指定されてしまうと土地にかかる固定資産税の優遇措置が適用されなくなるなど、所有者にとっても大きなデメリットがあります。

特定空家に関する空き家の管理・活用のご相談は是非とも弊社〇〇へ。

・・・ということではなく、こんな事になる前にできることはなかったのか?とか、近隣関係の希薄な独居の方への関わり合いは?とか、身近な問題としてどう捉えるか考えさせられる案件でした。

今後この案件は、本人死亡とともに家屋の解体撤去となり更地にして土地の売却となります、現金化した後相続人の兄弟に手渡されるようです。他人の人生ではありますが因果応報、すべては自分に返るものなのかと自分に置き換え過去を顧みて反省しきりである。

文責:千葉政美